『アニメで知る中国』キズナアイの歩みをひもとく中国バーチャルアイドル事情2018

『アニメで知る中国』へようこそ!ミミム(北京MYC)です。日本でも大人気のスマートフォンゲーム「アズールレーン」とキズナアイちゃんがコラボして大きな話題になりましたね。絶好調のキズナアイちゃんですが、中国本土では、「サファイア・スフィア~蒼き境界~」や「一零プロジェクト(10 Project)」などのゲームともコラボしています。日本だけでなく、中国でもゲームとコラボするということは、ゲームコンセプトにキャラクターがフィットしているだけでなく、現地で人気があるということを示しているのだと思います。今日は中国におけるバーチャルアイドルの現状を2017年から振り返りつつ、紹介していきたいと思います

1. 中国バーチャルアイドル事情2018

本日お届けしたいのは中国のバーチャルアイドル事情についてです。中国ではバーチャルYouTuberの事を「虚似偶像」、バーチャルアイドルと呼んでいます。よって、ここではバーチャルアイドルVIと呼称したいとおもいます。先ずは、キズナアイの中国登場からVIの中国での発展を見ていきましょう。

2016年11月29日にキズナアイがYouTubeに登場して以降、2017年3月にはビリビリ動画にて「AIchannel搬运」というアカウントが、YouTubeからビリビリ動画への運搬を行っていました。こういうYouTubeやTwitterの内容をビリビリ動画や微博などの中国サイトへ転載する運搬者を“搬運工”と呼ぶのですが、なぜわざわざ“搬運工”が必要かというと、YouTubeやTwitterが中国では見られないからです。

2017年6月26日、微博に遂にキズナアイのアカウントが登場すると、瞬く間に数万人のフォロワーがつきました。YouTubeが観られず、ビリビリ動画の転載だけでこれだけの人気が出たのは流石です。

ところが、この人気を支えたビリビリ動画転載アカウント「AIchannel搬运」が7月6日にアカウント凍結。「AIchannel搬运」が運営している微博アカウントには、閉鎖を惜しむ多くのコメントが書き込まれた為か、翌7日には復活し、動画も元に戻され、転載主も再開を報告しました。ビリビリ動画からは今後も運搬をしてよい、ということ以外特に説明はなかったようです。

ちなみに「AIchannel搬运」の微博アカウントは現在「AIC字幕組」という名前に代わっています。転載アカウントについては様々な意見があると思いますが、中国でYouTubeや正規の映像を見れない状況において、「転載」という行為が「日本のコンテンツの知名度」に与える影響は多大なものであることは否めません。

以下に2019年までの日中のバーチャルアイドルの中国での動きをリスト化しました。

2. 日中のバーチャルアイドルの中国での動き(2017年〜2019年)

2017年の主な出来事

  • 7月15~16日 北京で開催された第17回M.Y.Comic動漫遊戯節にキズナアイが海外イベント初登場を果たす。
  • 8月から咪咕動漫で「直観アルゴリズム」が配信開始
  • 11月 中国動画プラットフォーム愛奇芸の海南島でのイベント「愛奇FUN盛典」にキズナアイ登場
  • 11月15日 『サファイア・スフィア~蒼き境界~』中国鯖でキズナアイがコラボ
  • 11月21日 中国アプリ版『ラグナロクオンライン』のプレイ動画を配信
  • 12月 男子バーチャルアイドルDD登場

2018年の主な出来事

  • 3月『サファイア・スフィア~蒼き境界~』中国鯖でIAがコラボ
  • 5月 キズナアイがWechatスタンプをリリース
  • 7月 キズナアイがビリビリワールドにブース出展
  • 8月22日 2016年から活動していた中国バーチャルアイドル「琥珀」をメインインターフェイスに迎えた「HE琥珀」を深セン狗尾草社が開発・販売。
  • 10月13日 「Dream Forest」の小満というバーチャルアイドルが登場。
  • 10月20日 「战斗吧歌姬!」が登場。その華麗なグラフィックと歌唱で日本でも結構話題になった感がありますが、Twitterのフォロワー販売2019年4月現在4,000人弱。日本では『ReVdol!』と呼称されています。
  • 11月 新華社通信がAIのキャスターをニュースに起用。見た目リアルなVIなので一応取り上げておきます。
  • 12月 WEIBO Account Festival in Japan 2018にキズナアイが登場しました。

2019年の4月までの主な出来事

  • 1月8日 日本のカバー株式会社が運営するVtuber事務所「ホロライブ」がビリビリ動画と提携を発表し、ビリビリで15人のVtuberチャンネル設立したことを発表。
    2月5日 中国のアプリゲーム一零計画の中国鯖でキズナアイとのコラボを実施
  • 3月 アニメジャパン2019でビリビリステージにて電脳少女シロが2日間MCを務める
    3月 いちから株式会社が運営する「にじさんじ」ライバーがビリビリ動画のチャンネルを設立
  • 4月19日 いちから株式会社が中国ビリビリ動画と「Virtual Real Project」を実施することを発表。ライバーオーディションを実施したようです。
  • 4月26日 アズールレーンの日本と中国鯖でコラボ
  • アズールレーン配信会社の「Yostar」が新しいくリリースする麻雀ゲームもVtuberとのコラボが今後予定されています。

2017年から2019年までのVIの中国での展開を紹介しました。

3. VIの中国での動きについてミミムはこう考える

完全に網羅しているわけではありませんが、大まかな流れを理解して頂けたかと思います。年毎に振り返ってみると、2017年はキズナアイというVIが中国本土を強襲した一年と言えるでしょう。微博のフォロワーも8月の段階で15万人を超えていました。2018年はキズナアイは活動の主軸を日本に戻した感じがあります。8月の更新を最後にほとんどWeiboは更新していません。そして中国からも少しずつVIが登場しましたが、2019年に入っても継続して活動を続けているのはReVdolやDD等、ほんの一部の様です。小満を送り出した「Dream Forest」の後続ライバーにも期待したいところですね。

2019年はにじさんじ、ホロライブといったupd8以外のVIの中国進出が今のところ目を引きます。ただ今のところキズナアイほど爆発的とは言えないようです。キズナアイがもたらした中国でのVIインパクト。その影響力は大きいと言えます。ちなみに現在キズナアイの微博のフォロワーは37万4,500人となっています。これは今後中国で展開するVIのひとつの指標となるでしょう。これから中国発で日本にインパクトを与えられるVIが出てくるのか、それともこのまま日本由来のVIに飲み込まれてしまうのか。中国のVI界隈はこれからもにぎやかになりそうな気配がします。

記事:ミミム(北京MYC)

北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは

2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。