『アニメで知る中国』2020年の中国アニメ市場を占う?2つのニュースについて

『アニメで知る中国』へようこそ!ミミム(北京MYC)です。最近出た2つのニュースが今後の中国を占えそうだったので、今回ピックアップしましたよ。1つ目は、中国で14年の歴史を誇る洋画海賊版サイト、「聖城家園」がついに閉鎖したこと。2つ目が北京市による「北京遊戯産業健康発展に関する若干の意見」の発表です。こちらの2つのニュースで来年の中国ACG市場を占っていきたいと思います

第26回『アニメで知る中国』2020年の中国アニメ市場を占う?2つのニュース

中国といえば海賊版というイメージかもしれませんが、アニメは2011年のFate/Zeroから始まり、音楽では日本レーベルが2018年から中国の音楽アプリと提携を始め、映画もコナン、ワンピース、新海誠監督の君の名は。、天気の子なども上映されており、10年前とは比べ物にならないほど、中国での海外コンテンツは正規化されています。

しかし、正規化されるには市場がなくてはなりません。その市場を作ったのは海賊版です。中国は物理的に海外からのコンテンツが入りにくかった時代が長く、そして2000年以降ネットが発達した今でも海外の映像、音楽などのコンテンツは手軽に視聴できません。

欧米コンテンツは、90年代はDVD等の物理メディアによって、2000年代以降はネットの海賊版サイトによって認知される機会が大きく高まりました。その中で中核的なサイトの一つであったのが、今回ニュースになった聖城家園です。

中華人民共和国国家版権局のサイトに掲載されている12月13日のニュースがこちら。ネットに隠匿して14年、クリック数13億回、警察が超大型海賊版サイト、聖城家園を摘発。

2019年2月11日に通報されてから調査を行い、山西省公安局網安部はついに聖城家園を摘発した。該当サイトは香港に4台のサーバーを借り上げ、12700作品以上の映像データ、16300曲以上の楽曲データ、4700本以上のゲームデータ、4000以上のMVデータ、9900本以上のソフトデータを押収し、一挙に3人の主犯を逮捕、14年間ネットに隠匿されていた海賊版サイトを徹底的に壊滅させた。

という内容です。中国には今まで人人影視、射手網、悠悠鳥影視、影視帝国、BT 天堂など様々な海賊版コンテンツサイトがありましたが、これで一通り摘発されたと考えてよいでしょう。

海賊版コンテンツがこれほど中国で蔓延していた理由はすでに多くのサイトで説明されていると思いますが、以下の2点に集約されそうです

  1. 国内上映版と海賊版の内容が異なる。
  2. 消費する方法が他になかった。

海賊版は中国市場に海外コンテンツに対するリテラシーを植え付けたといえますが、もしかしたらその役目を終えようとしているのかもしれません。2019年の年末になってようやく一掃された海賊版サイトですがその理由も2つだと思います。

  1. 米中貿易戦争の関係があるのではないか
  2. 中国国産コンテンツに力を入れる下準備をしており、機が熟した

米中貿易戦争において、米国の中国に対する外交カードとして、「海賊版」というのが存在するのではないかと、ミミムは考えています。ディズニーは版権にかなり注力していますので、ビジネスを今後中国で展開するにあたって、海賊版は大きな障害になるでしょう。「法律順守」という大義において海賊版の存在は、中国を違法を容認する国家としてこき下ろすのに使いやすいポイントだと思います。なので中国はこの部分をアメリカに突っ込まれないように、突弱みを減らそうとしているのではないかとも考えられます。

また、機を熟した、という部分に関しては、近年中国劇場版アニメでは、大聖帰来や哪吒、羅小黒戦記の興行的成功や来年の姜子牙などの上映が控えている点。そしてテンセントがハードゲーム機Switchの販売、パーフェクトワールドのSteamでのPCゲーム展開にあたり、海賊版は国内産業に対するリスクになる可能性があります。その為、今まで国内の産業成熟を待っていた政府が、国内産業が一定以上発展できたと判断した、と推測します。

海賊版サイトの撲滅が進み、今後中国市場は増々正規化されていきますが、もしかしたら海外コンテンツは苦戦を強いられることになるかもしれません。

なぜかというと、海外コンテンツは輸入が制限されており、さらに正規の消費ルートは限られているため、消費者が海外コンテンツに触れる方法がどんどん少なくなっていく可能性が高いからです。いままで日本コンテンツが海賊版と正規版の両方のルートによって日本と中国で人気が同期されていたのが、これからはコンテンツの認知度や市場形成が日本とは同期されなくなっていくのではないでしょうか。他国コンテンツの市場育成を中国国内企業が喜んでお金をかけて行うのは難しいでしょう。

日本製ゲームの中国での苦戦、日本コンテンツの消極的な中国展開、中国の上質なオリジナル日本系コンテンツの発達、を見ると今回の海賊版サイトは確かにめでたいことではあるのですが、今後日本コンテンツホルダーは中国市場でさらに苦戦しそうな気がしました。

さて、2つ目のニュース見ていきましょう。

北京市委員宣伝部が「北京遊戯産業の健康発展に関する若干の意見」というものが12月14日に発表されました。https://mp.weixin.qq.com/s/OmlDZp36SS6OXAnlvmgaWQ

中身は真っ赤な、所謂、非常に共産主義的な言葉で修飾されていますが、いくつかの施策により2025年までに北京市のゲーム産業市場を1500億元(2.3兆円)規模にまで成長させることが提示されました。

  1. 北京市の文化発展基金に、高品質オリジナルゲームの為の基金を新たに設置する
  2. パブリッシャープラットフォームをインキュベーションする
  3. 5Gなどのクラウドテクノロジーを応用しるサポートを行う

こちらの3点を読み解くと、それぞれ

  1. おそらく補助金出しますよ
  2. おそらく北京でゲーム作ったら版号優先的に出しますよ
  3. おそらくテンセント等の北京に本社を置かない企業に負けないようにサポートしますよ

という事だと思います。

統計によると北京には517社のゲーム会社があり、上海の719社、広東省の727社に続き、3位につけてます。北京の500社にはパーフェクトワールド、アワーパルム、暢游、Funplus、Happy Elementsなど、どれも規模が大きい企業が居を構えていますが、日本で有名なManjuやmihoyoやYostarなどは上海、最大規模のテンセントは深センが本拠地です。こんな「意見書」一つでどこまで業界が動くのかわかりませんが、予測の2番である、版号優先審査というメリットがあるなら、大きな変化が訪れるかもしれませんし、中国は共産国なので、皆が平等に儲けることを政治的には是とされていまので、もしかしたら、テンセント対策なのではないかという事も考えられます。

この期に及んで、北京市は地方都市に対して何を興奮しているのか、China Joyだって成功させられなかったのに、とは思ってはいますが、北京を本拠地にしているミミムとしては悪い話ではありません。今後北京のゲーム会社が増えてくれれば、仕事も増えるかな、と淡い期待を持ってしまいますね。


ということで、本日のアニメで知る中国いかがだったでしょうか。色々考えさせられるニュース2つ、ご紹介しましたが、年末に来年の中国市場に思いを巡らせられるネタを提供できたらいいんですけどね。もしなにか他に質問や聞きたい事などありました、ぜひコメント残していってくださいね。

では本日の動画はここまでです。

第25回、「2020年の中国アニメ市場を占う?2つのニュース」いかがでしたでしょうか?ナビゲーターのミミムがお送りいたしました。

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北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは

2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。