皆さんこんにちは、アニメで知る中国にようこそ、ナビゲーターのミミムです。
今回は台湾人作家と出版社のトラブル解説というかなり重い話題なので今日は助っ人を呼びました。レア犯罪ハンターじゃこにゃーさんです。
台湾出版社と台湾人艦これイラストレーターの係争についてじゃこにゃーさんに聞いてみた
じゃこにゃー:レア犯罪ハンターこと、そして法律系vtuberこと、じゃこにゃーと申します。
一体何があったのか見ていきたいと思います。
「血と汗の創作漫画家、漫画家マネージメント会社が、お金を少なめに支払う」。2017年3月1日に、台湾の新聞「自由時報」っていうところが出した記事です。
で、2022年9月に結果として「少女兵器、鋼鉄少女の版権を奪還、漫画家ZECO第2審勝訴」。一体この間に何があったのか、2017年の記事で今 2022年なんで、約5年半です。
じゃこにゃー:長いですねー。
まずZECOさんとは誰なのか、そして争っていた相手、Friendly Landとはどういう会社なのか?当事者2人を確認していきましょう。
- 当事者その1
ZECOさん(作家)。台湾人の漫画家で鋼鉄少女・少女兵器の著者です。艦これでは、ワシントン・サウスダコタ・ノーザンプトン・ヒューストン・フレッチャー・ジョンソン・サミュエル・B・ロバーツなどのイラストを描いてます。
- 当事者その2
Friendly Land(会社)。2007年7月に設立した台湾の会社です。代表は王士豪で、日本コンテンツを台湾に輸入するなどの業務を行っています。いわゆる出版社、或いは作家マネージメント会社です。
ZECO先生が兵器少女を2005年に制作してから2007年に設立したFriendly Landに窓口として営業してもらって、作家さんは作品の制作に集中するという構造でした。問題が起こる前は提携関係でした。
2016年にFriendly Landが「私たちが鋼鉄少女だとかあるいは少女兵器とかを考えて、ZECOさんに業務委託で制作してもらったんですよ」「なので、あなたが作ったこの2作品及びその他のものに関しては私たちに著作権がありますよ」と突然言い出します。
主張は以下の3点です。
- 鋼鉄少女や少女兵器の著作権はFriendly Landにある
- ZECO先生は下請けであり、著作権はない
- Friendly Landは著作権にまつわる費用をZECO先生に支払わない
じゃこにゃー:やばいですね、
2017年3月1日当時の自由時報の記事「血汗の創作漫画家がマネジメント会社を過小支払いで訴える」によると、2006年に王士豪と出会い、信頼して王が経営する会社、Friendly Landに、「少女兵器」と「鋼鉄少女」を委託した。両者は収入を折半あるいは6:4で分配することに決め、9年間提携したが、2016年、突然ZECOは王に騙されていたことに気づいた。
鋼鉄少女が中国大陸で、アプリゲームとして開発することになり、ゲーム化権料として1200万円をもらったと聞いていた。ところが王は自社の経営不振や旅費などを理由に、最終的には全部色々なものを差し引いて約160万円しか支払わなかった。
じゃこにゃー:すごいですね。1200万のうち10% くらいしか渡してないってことですね。
6:4か半分で分けるんだから、もうちょっと金額多くてもいいよね、色々おかしいよねってことで調べてみたら、実はゲーム化権料が3600万円だったって話なんですよ。
1200万円って言ってたじゃん。3分の1 の金額しかZECOさんに言ってなくて、さらにその1/10のお金しか払ってない。1/30って話になっちゃうわけですよね。
じゃこにゃー:いやこれは、びっくりしますよね。
それでZECOさんはFriendly Landさんと掛け合ってみたけど全然聞いてくれない。BBSっていう、いわゆる2 チャンネルのようなところで発表し、一気に注目を浴びることになります。それが先ほどの自由日報の記事になります。
わかりにくいと思うので時系列にまとめてみました。
話は2005年のZECOさんが少女兵器を作ったところからスタートしています。
じゃこにゃー:ちょっと僕も言いたいところなんですけど、これめちゃくちゃ重要。
はい、非常に重要な部分です。
2007年4月 Friendly Land設立
2011年 バトルシップガール鋼鉄少女がコミックガムで連載開始
2013年 艦隊コレクションが日本でリリース
2015年 中国のゲーム会社が鋼鉄少女をアプリゲーム化
Friendly LandがZECOにゲーム化権料は1200万円と伝える
2016年 ゲーム化権料は3200万円だと発覚する
2017年 ZECOがFriendly Landを刑事告訴
2015年の時、出版社とZECOさんの間の料率が5対5から、10%上げて、6:4になりました。これは出版社が出張したりして、より円滑にゲームを制作するためというのが建付けだったんですね。最終的に1200万円のうち、Friendly Landは会社経費、あるいは旅行費として差し引いて、最終的に160万円しかZECOさんに支払わなかったんですね。
(配信では40万円と言っていましたが、40万台湾元で約160万円です)
じゃこにゃー:全然違いますね。
ZECOさんは分配金に違和感を覚えます。説明を求めるのですが、会社経営大変だろうと、ZECOさんが色々な譲歩をします。すると2016年11月に突然Friendly Landの王社長がZECOさんを呼びつけて、秘密保持契約、業務委託契約を結ばせます。実は両者の間には契約書がそれまで無かったんですね。
先生もどうすればいいのかわからなくなって、結局この業務委託契約書にサインします。もともとZECOさんが自分の作品をFriendly Landに委託してたのが、Friendly LandがZECOさんに制作を委託している、という立場の大逆転が起きてしまいました。
じゃこにゃー:なるほど、もう本当にまるっきり地位が逆転しちゃったって感じなんですね。
当時ZECOさんが関連していた日本の2つのプロジェクトをFriendly Land勝手に断ってしまいます。
じゃこにゃー:あー良くない非常に良くない。それはひどいっすね。
そして2016年ゲーム化権料が 1200万円じゃなくて、3200万円、まあ3000万と簡単にしましょう、3000万円だと発覚します。
じゃこにゃー:いやーこれは、まぁちょろまかしてたわけですね
それをZECOさんが知ったとFriendly Landが認識した途端に、鋼鉄少女のゲーム会社とZECOさんの直接連絡禁止するんですね。最終的にZECOさんはどうしようもなくなって、2017年ZECOさんがFriendly Landを刑事告訴します。
じゃこにゃー先生どうですか、この経緯を聞いてみて。
じゃこにゃー:これは結構、ほんと企業としては、まあ、裁判が終わったことだから言うんですけど、ほんと悪質なケースじゃないかなと思いますね。この後のスライドでも出てくると思うんですけど、契約書をまく時って売り上げの何%とか、権利の何%をお支払いしますよ、っていう形にするんですけど、その元の数字が変わったら変わってくるじゃないですか。報酬が。で、それを本来渡さないといけなかったものにもかかわらず、それを渡せなかった、っていうのは、これ下手したらやっぱ、横領とか、そういうことになってくる。やっぱりこの対応っていうのは、なかなかひどいものだなっていう感じですね。
じゃこにゃー:あと、刑事っていうのは、刑事告訴したことと著作権の訴訟は別個なんで、そこはご注意ください。あくまで時系列で最初に、ZECOさんが刑事告訴をしたよ、っていう話であって、著作権がどっちっていう話はまた別訴訟で、著作権は民事です。まず時系列的に最初に出てきたのが横領の刑事告訴ということですね。
ZECOさん側は、この段階では著作権に関しては問題はない、という認識だったんでしょう。
じゃこにゃー:そうでしょうね。問題になってるのって、本来払うべきその報酬をチョロまかしてたことなので、著作権っていうところは問題にはなってない。
ZECOさんの告訴ですが、まず原告ZECO側の意見は、作品委託しているのに払うべき報酬が少なすぎる、ということを主張します。ところがFriendly Landが2つ主張します。まずZECOさんの作品は私たちが最初に考えたものを、ZECOさんに業務委託して作ってもらったものです。なので私たちが原案なので、著作権も我々にあり、ZECOさんの作品に対する著作権料という話はありませんと。
じゃこにゃー:すごいですね。色んな訴訟が重なってて難しいんですけど、要は横領じゃないよ、ちゃんとその見合ったお金を払ってるよ、っていう主張に著作権の争いが出てきてるってことに注意と。
最初にもお伝えしましたが、以下の3点がFriendly landの主張です。
- 書籍は、©、著作権、Friendly Land表記だから、著作権はFriendly Landにある。
- ZECOは2016年11月の契約で著作権を譲渡した。
- ZECOはFriendly Landに雇われて作品を制作していた。
すごいですよね、なんか全然違うものを持ち出してきました。
じゃこにゃー:ツッコミどころ満載なんで、めっちゃ言いたいですね。
裁判の進展として、ZECOさんの第1審は海外資金が絡んでいるので証拠不足ということで、不起訴処分になります。2018年に、第2審をやります。しかしここでも業務委託契約書を根拠にZECOさんの主張を棄却します。ZECOさん、刑事裁判には最終的には勝てなかったんです。裁判所はZECOさんは依頼を受けて制作したのであって、契約書を元に、あなたはこの作品の原作者じゃありませんよ、ってなったのです。
この業務委託契約書だけを根拠に棄却する、っていうのもまあ、あることなんですかね?
じゃこにゃー:おそらくですけど、犯罪を問うだけの証拠がなかったってこと。証拠不足っていう話なのでね。そういう意味の証拠が足りなかったっていうことで、訴えることができなかったってことですね。
この刑事裁判第2審で著作権はFriendly Landの方にありますよ、となってしまってたのですが、それはおかしい。ちゃんと自分で描いたものなんだから、それだけは回収したいということで、ZECOさんはFriendly Landを、著作権の所在契約書の無効で民事裁判を起こします。ここで初めて、著作権にフォーカスされた裁判に入ります。しかし民事の第1審では、またもや業務委託契約書を根拠にZECOさんの主張が棄却されます。裁判所が証拠不足だと判断したと推察されます。2020年にZECOさんがもう一度著作権の所在、契約書の無効解除で第2審を起こします。
この時の第2審の裁判官は、第1審の裁判官とかなり状況が違って、著作権専門家の裁判官が3名付いたらしいんですね。
じゃこにゃー:なるほどなるほど、そこは日本と仕組みが、どうなのかなっていうところはありますね。日本だと知財専門の裁判所に送られるので。
一応知財専門の裁判所らしいんですが、一審ではその専門家ではなかったみたいなんですね。二審で初めて知財専門の裁判官が入った。そして今回勝訴と言われている理由がこの第二審であるわけですよね。
争点は先ほども言ってた3つですよね。
- 著作権マークはFriendly Landだから、著作権はFriendly Landにある
- 2016年11月の契約で著作権を譲渡した
- ZECOさんはFriendly Landに雇われて作品を制作していた
じゃこにゃー:そうですね。うんうんうん
この3点に対して著作知財専門の裁判官3人の結論とは何なのか?
まずは1点目、書籍は©Friendly Landだから、著作権はFriendly Landにあるよっていうところに対して。裁判官は書籍には、著者はZECOであることが明記されており、著作権表記したからといって、イラストの著作権がFriendly Landにあるとは言えない。
Friendly Landがイラストを選別配置し、それに対してオリジナリティがあるのならば編集者に著作権があるんですけども、イラスト自体の著作権はZECOにあるということがわかる。
そして中華民国著作権法第13条にて、著作権マークがあれば著作者だと推定できるが、上記の理由により著作者はZECOにある。
次が少し複雑なのですが、Friendly Landの1点目の争点に対する主張として、後付けの契約書で、著作者ではなく業務委託であると証明することによって、Friendly Landが著作者である、としたのですが、裁判所からはこの主張は却下されました。
Friendly Landは中華民国著作権法第12条の条文を、Friendly Landは作品制作が終わった段階で、制作費を支払って委託した形をとったとして、著作権は出資側のFriendly Landにあると解釈しました。
ところが裁判官は、これは既定の通り著作者が著作権者なので、この解釈の仕方は不採用です、と判決したんです。
なので結論として「「この書籍は©Friendly Landだから、著作権はFriendly Landにある」という理論は認められない」ってことですね。
じゃこにゃー:ここからちょっとだけ僕が説明しても大丈夫?
お願いします。
じゃこにゃー:皆さんこの©(コピーライトマーク)、ていうのをよく見ると思うんですけど、これって実は今はあんまり意味がないマーク、っていうことをお話ししたくて。
じゃこにゃー:自分の過去動画でもこれ取り扱ってるんですけども、この©っていうのは、もともとその著作権、自分のこの作品には著作権が発生しているよ、っていう発生条件の1つだったんですね。
じゃこにゃー:これを方式主義って難しい言葉で言うんですけど、この©、いつその著作権をあの作品を作ったかの年度、自分の名前、っていう3点セットで書くことによってその作品に著作権っていうのが発生する、っていう方式主義っていうのがありました。
じゃこにゃー:この条件は、主にそのアメリカとかが採ってた、万国著作権条約っていうのがあるんですけど、その万国著作権条約っていうのに加盟していると、そういう風にしないと、著作権は発生しませんよっていう考え方なんですよ。
じゃこにゃー:ところがですね、今はもう一つ条約があって、ベルヌ条約っていう条約がありまして、アメリカも結局加盟したんですけど、それに加盟するとどういうことが起こるかっていうと、万国著作権条約に優先して、ベルヌ条約が適用された結果、その方式主義から作品を作った瞬間に著作権が発生しますよ、っていう主義に変わったんですね。
じゃこにゃー:だから、そこの部分が複雑に絡まってるんですけど、そもそもですね、台湾って万国著作権条約には加盟してないですよ。
じゃこにゃー:加盟してないってことは、この©をつけてもいきなり著作権が自分にある、自分のものだとは言えないんです。ただし、著作権の推定、この中華民国著作憲法13条では、そういう名前がついてたら、その人が書いたんだろうな、ってことを推定するっていう規定なんですね。
例えば自分の筆箱とかに自分のなんか名前とか付いてたら、あ、これってこの人のものだなって、 分かるじゃないですか。そんな感じで、作品にその名前を書いてたら、あ、この人が著作権者だな、っていうふうに推定すると。
じゃこにゃー:推定するっていうことをFriendly Landさんは言ってたと。ただしこの推定っていうのは、その法律用語で結構難しいんですけど、反対の証拠があれば覆るっていうことなんですよ。
あー 推定とは 反対の証拠があれば覆るんですね
じゃこにゃー:覆るんです。あのもう一つ、みなすっていうのがあるんですけど、みなすっていう言葉がもし使われていた場合は、いくら証拠を詰めようが、法律上みなしてしまうので、もう、あの、覆らないんですよ、動かないんです。でも推定は動くんですよ。
じゃこにゃー:結局推定はされるけど、そのじゃあ著作権ってどうやって発生するの、って言ったら、万国著作権条約だけには加盟してない。してないから、基本に立ち返る。結局作品を作った段階で著作権が発生するっていうのは、日本と共通して台湾も取っていると。
じゃこにゃー:なので、 当然のごとく最初にこの作品を作ったのがZECOさんなんです。それは他の証拠からわかるから、推定が覆って、著作権はFriendly Landにあるというのは認められなかった、っていう話なんです。
なるほどね。Friendly Land、©だからって、著作権は見た目上Friendly Landにあるみたいだけど、実際はあくまでも推定でしかない。
ちゃんとほら見てください、ここにちゃんと証拠があるでしょ、っていう裁判官が認める証拠をZECOさん側が並べた結果、これは明確にZECOさんのものですよ、ってことが証明された。
じゃこにゃー:そういうことです。ここで注意していただきたいのは、その©っていうのは、今のやつでは、正直言ってあんまり意味がないっていうところを押さえてほしい。推定は反証できます。推定されるっていう程度しか意味がない。宣伝になって申し訳ないですけど、私の過去動画でも扱っているので是非。
じゃこにゃー:ちなみにあともう一つ、なんかよくオールライトレシーブドといってなんかありますね。あれも意味がないっていう動画を出してるので、是非。作品を作った時点で著作権が発生する、っていう風に思っていただければいい。
コメントで「「推定」は日本の著作権法にもあるんですか?」と聞かれています。
じゃこにゃー:あります。結構日本の著作権法と似てるんですけど、日本でも著作者の推定ってのは14条にあります。その著作者の著作物、要は作品ですね。原作品を公衆で配るとかね。そういう時に名前が書いてあると、っていう場合は著作物の著作者と推定するって書いてます。
じゃこにゃー:例えばもし推定じゃなかったらどういうことが起こるか。勝手に僕がミミムさんの作品に「じゃこにゃー」って書いて、著作権は俺のものってなっちゃう、ジャイアニズムとか生まれてしまうわけですよ。
じゃこにゃー:なのでミミムさんが「いやこれは私がもうすごく丁寧に書いた作品なんだ」っていうのを書いている、そのファイルとか残っているよとか、そういうので反証したら普通に覆るわけです。そういう余地を残していると。
では2点目。
ZECOさんが2016年11月にFriendly Landと交わした業務委託契約書で著作権を譲渡しているということなんですが、裁判官の方が契約書を見たところ、そのような条項は見受けられないと。ただの業務委託契約書であるという結論になりました。
Friendly Landは契約書には著作権を譲渡することに間接的に合意していると主張したんですが、台湾著作権法36条3項に契約上不明確な部分がある場合は譲渡されなかったと推定される。とされており、契約書は会社創立の2007年までしか遡っておらず、少女兵器などは2005年にすでに創作されているので含まれているとは言えない。というのが裁判官の判断でした。
じゃこにゃー:これも面白い主張なんですけど、実はこれ、Friendly Landがなんで「著作権を譲渡した」という主張をしたか、って話なんです。
じゃこにゃー:Friendly Landが発案してるからFriendly Landに著作権がある、っていう主張をしていましたね。台湾も日本も同じようなことがあるんですが、著作権っていうのは基本的に作品を作った人に、著作権っていうのは帰属します。が、例外があります。例外っていうのが、職務著作っていうのがあります。例えばその雇用関係にあるとか、会社の指示でこういう作品を作ってくださいという形で職務著作に該当すると、著作権は会社に最初から帰属します。
じゃこにゃー:でももちろん、業務委託契約じゃダメで、実質的な雇用関係とか指揮命令関係があるっていう要件があるんです。会社側に著作権があると主張する場合、職務著作を指していることが多いです。
じゃこにゃー:ところでみなさん、先ほどの時系列を覚えているでしょうか。Friendly Landが設立されたのは2007年です。少女兵器が創作されたのは2005年です。どう考えても職務著作は主張できません。だって、あとに会社ができてるから。ここが重要ポイントですよ。
じゃこにゃー:だから著作権はZECOさんにあるかもしれない。だから著作権を譲渡したんだ、って主張をしたんです。最初からFriendly Landに著作権があるって言うんだったら、そう言った方が早いわけじゃないですか。それが言えなかったのは、時系列上どう考えても無理だからです。
じゃこにゃー:認められなかったわけなんですが、著作権って譲渡できる権利なんですけど、めちゃくちゃ要件は、台湾も日本も厳しいです。というのも著作権って、自分の思想または感情が備わった創作性があるものって、やっぱその人しかできない、作品を作ることができないわけですよね。なので譲渡をする場合は、結構ちゃんとしっかり契約に入れておかないといけないっていう条文がございます。
明確に譲渡しますみたいな。ちゃんとした明文がないといけないってことですね。
じゃこにゃー:例えば日本の場合なんですけど。日本の場合は譲渡をするときに、例えば著作権に関わる一切の権利を譲渡します。って書き方を契約書に書きますよね。でもそういう書き方だとある特定の権利だけは譲渡されません。ちゃんと条文を示して、この権利とこの権利を譲渡する、ってしないと譲渡されないんですよ。それほど厳しく考えていて、中華民国著作権法にもやっぱり不明確だと、譲渡されなかったと推定する、と記載されています。それだけ保護を厚くしている規定なんですよね。
じゃこにゃー:「譲渡することを間接的に合意してる」っていうのはよく分かんないんですけど、ふわっとした感じでは譲渡したとは言えないので向こうの会社の主張は認められなかった。
じゃこにゃー:だからここから分かるのは、Friendly Landが、自分に著作権があることを言おうとした、っていうのがわかるんですけど、職務著作は今回の件ではどう考えても違うので、苦しい主張なんですよ、めちゃくちゃ。
では最後の3点目にいってみましょう。
Friendly Landは、ZECOさんは雇われて作品を制作していたと、いうことを主張していました。そこで、ZECOさんは過去のFriendly Landのメールのやり取りを提出します。
Friendly Landからのメールは作品提出の催促や製作上のアドバイスのみで、ZECOさんにキャラクター設定やキャラ紹介の提出を求める内容もあることから、雇用関係や制作依頼があったことはないと、裁判官は認定した。
またホームページや過去の出版書籍の帯、あとがきにおいてZECOさんが、この作品を創出していることが、明確に記載されている。
そこでFriendly Landは、ZECOさんは書籍出版後に「これらの作品は依頼される前に制作したことを説明せず、信義則違反」といったわけですが、裁判官に却下されてます。
じゃこにゃー:この雇われて作品を制作したってところが、やっぱりその職務著作との関連が強いのかな、っていうのと、あとは最初の発案は自分なんだと、ラフ案とかそういうのを色々考えて、著作権、自分が作品を書いたんだ、っていう主張をFriendly Land側がしようとした、って話なんですけど、でも結局ZECOさんがキャラクターとかの設定、イラストを描いたのが証拠で明らかになった。
基本に立ち返ってやっぱり作品を作ったのはZECOさんだ。だから著作権はもちろんZECOさんになる、ということを言っているだけなんですよね。
以上によってですね、判決が出ます。
判決!
原告ZECOの主張を全面的に支持する。Friendly Landの抗弁は採用するに明らかに足りない。
最初のZECOさんの要求通り、鋼鉄少女及び少女兵器の著作権はZECOさんにあるのが認められ、契約書の破棄も認められたことによってですね、完全な勝訴ですね。
残る最高裁、第3審っていうのは存在するらしいんですが、こちらは第二審の裁判官が、適用条項が正しい情報かどうか確認するだけの作業になるそうです。
じゃこにゃー:そうですね、日本でも最高裁っていうのは法律審と言って、要は法律の適用があってるかどうかを確認する作業なんですよ。
じゃこにゃー:一審二審っていうのは、こういう事実があるかどうかを確認する作業なんですよ。二審で事実がもうカッチリハマった以上は、もうその事実って動かないわけですよ。
じゃこにゃー:なので最高裁で争ったとしても、この条文はこういう意味だから、あの事実をもう1回確認しなさいよ、って差し戻すしかないんです。でも今回は別に解釈、法律の解釈が問題になってるんじゃなくて、どういう事実があるかっていうのが、主な争点になってるので、もうここでバチッと決まったっていうことですね。
事実確認ということで、あとは条文に関しては特に係争もないので、これはもう完全な勝訴ということで、ZECOさんが自分の娘たちを奪還したということですね。
じゃこにゃー:はい。おめでとうございます。
今回のこの事件、じゃこにゃーさんから、感想お願いできますか。
じゃこにゃー:まあまあよく聞く話ではあるんですけど、会社の対応に苦しさっていうのが、僕はちょっと見えた気がしました。かなり苦しいと思います。かなり苦しいので逆に今回はちょっと取り上げませんでしたが、一審がどういう事実認定をして認めたのかっていうのは、個人的にはなんか、気になる部分ではありますね。
これは日本で起こり得る話なんですかね。
じゃこにゃー:はい。これは日本ではめちゃくちゃ起こりうる話だと思います。特に企業で所属のイラストレーターさんとかよく起こることで、どっちに著作権があるの、どっちに著作権がくっついてるの、っていうのはほぼ毎回争いになる。なんで争いになるかっていうと、今回の押さえてほしいポイントというかあるんですけど、原則著作権は作った人に帰属するんですよね。
じゃこにゃー:それが大原則なんですよ。基本中の基本なんですよ。自分が描いた絵、自分が作った動画とか帰属するのですけど、法律上は例外があります。で、それが何かっていうと、さっきも言ったんですが職務著作です。例外的に会社に帰属するパターンが、要件を満たせばあります。
じゃこにゃー:会社はこれはこの要件を満たしているんだから自分のものだ。イラストレーターは、いやその要件を満たしてないでしょ、自分が全部考えたんだから、っていう争いがある。そういう原則と例外がある以上は、やっぱり日本でも同じことが起こる。
じゃこにゃー:だから気をつけないといけない。じゃあどうしたらいいかって話なんですけど、やっぱりその作品を作っていった時に、なんかいろんな思いっていうのを詰め込むと思うんですよ。こういうところを工夫したとか。そういうところをちゃんと説明できるようにしとくってのがやっぱポイントなんですよね。
じゃこにゃー:ただ会社側が、ここの髪型はこうしてください、会社が考えたんでこういう風にしてください、っていう風に指導を受けると、どんどん職務著作に近くなっていく。結論としては日本でも普通に起こり得ると思います。
じゃこにゃー:契約書はきちっと見た方がいいですし、わかんないことがあればきちんとした専門家、弁護士さんとかねに相談していただくというのが一番いいのではないかなと思います。
かなり情報量が多いので、できるだけ皆さんに分かりやすいようにしたつもりです。じゃこにゃーさんも台湾の法律 、著作権法をわざわざ調べていただいて、釧路にそんな調べられるところあったんでしたっけ?
じゃこにゃー:いやー釧路じゃないですね
あ、釧路じゃない?
じゃこにゃー:兵庫県です。
兵庫県か、あーすいません、なんかちょっとあの、推定兵庫?
じゃこにゃー:あー推定兵庫、推定、じゃあ反証、反証で、ちょっとこう兵庫を出すんで、ははははは。
これは覆されるやつだ。もうなんか Twitter上では、じゃこにゃーさんは出身推定釧路になってますけど大丈夫ですか?
じゃこにゃー:あーいや全然大丈夫じゃないですね。
ははははは。これも一つ重要な話なんですが、ZECOさんの「鋼鉄少女」は「艦これ」出た時に、「鋼鉄少女」が「艦これ」をパクったって言われてたんですよ。今はねそういう認識もほとんどないと思いますけど、ただ当時そういう認識だった人も多いんで、ちょっと前後関係しっかりと見せていきたいと思います。「艦これ」より「鋼鉄少女」の方が先です。
じゃこにゃー:はい、クリエイターの皆さん、気をつけていきましょう。僕ら消費者のみんなもですね、間違ったことがあればちゃんとやる、作家さんあるいは正しい方を支持していくということを、やっぱりやらないといけないと思っております。
今回ですね、 祝勝台湾人作家と出版社のトラブル解説、を、レア犯罪ハンター じゃこにゃーさんとお送りいたしました。本日はありがとうございました。
じゃこにゃー:ありがとうございました。
※本記事は配信を基に調整・校正・再調整したものです。
北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは
2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。