皆さんこんにちは、アニメで知る中国にようこそナビゲーターのミミムです。先日Twitterで次の動画のお題の投票を2択でお願いしました。皆さん沢山の投票ありがとうございます!今回、「中国のコンテンツ規制」の方が多かったのでそちらについて、動画を出したいと思います。
目次
第36回『アニメで知る中国』中国のコンテンツ規制について
まずこちらの漫画を見てみましょう。中国のSNS微博で掲載されたものです。
一枚目はではパンダが各国のコンテンツに夢中になっているのを、大パンダが複雑な気分で見ている様子が描かれています。子パンダは中国人、大パンダは中国政府を示していると思います。
二枚目は大パンダが国産漫画アニメ、ゲーム、映画などに号令をかけ、訓練していますね。
三枚目は屈強となった国産コンテンツですが、大パンダが審査の穴を通るよう指示しています。
四枚目は審査の穴を潜り抜けて縮まってしまったコンテンツが各国と対峙する様子を描いています。
中国政府はコンテンツに対する規制があり、今のままでは海外のコンテンツとは戦えない、という事をわかりやすく描いたものだと思います。
一枚で表現しきれないのが、中国の複雑さを示していますね。
また先日、「広告」という雑誌が池袋の天狼院書店で「中国におけるパクリの現在地」というトークイベントを開催しました。
こちらでは中国のコンテンツに対する規制が、クリエイティビティに大きな影響を与えているという話がありました。
では、この「規制」とは一体どういうものなのでしょうか?
中国でのコンテンツに対する規制は2つあります。
中国コンテンツ規制について
- プラットフォームの規制
- 中国政府による規制
これらを順番に見ていきたいと思います。例えば プラットフォームの規制、あなたが中国で「ひぐらしのなく頃に」という作品の漫画、アニメ、ゲームを出したいとします。
まず参照すべきなのが2001年に制定された「出版管理条例」です。本条例では出版活動として、出版、印刷、複製、輸入、発行を上げていて、さらに出版物には新聞、ジャーナル、図書、音楽映像、電子出版物があると定義しています。紙媒体の漫画、VCD等の映像作品はこちらに属しますね。
ゲームはこの「出版管理条例」と「互聯網信息服務管理弁法」の2つの法律に基づいて作られた「互聯網遊戯出版管理規定」にてゲームを出版する、という表現をしています。
なので、中国では、アニメ、コミック、ゲームのACGというコンテンツは、全て出版物として処理されます。オンラインでドラマ、漫画、アニメを出す場合はビリビリや愛奇芸のようなオンラインプラットフォーマーの責任において配信することができますので、この限りではありません。何か問題があれば配信した側が責任を取ることになります。
簡単にまとめると以下のようになります。
- 紙媒体或いはVCD等円盤で出す場合、出版社を通して出版することになる。
- ゲームも同じように出版社を通して出すことになる。
- ネットで配信する場合は、オンラインプラットフォームを通してリリースする。
では、プラットフォームに対して中国政府はどのように管理しているのでしょうか?それを知るにはまず中国政府の構造を知らないといけません。中国は「中国共産党中央委員会」、略して「中共中央」と「中国政府」の2つの機関が運営しています。
「中共中央」と「中国政府」の違い
「中共中央」と「中国政府」はどういう関係なのか?こちらの図で、現在の指導者、習近平氏の立ち位置を見るとわかりやすいです。ご覧の通り、中共中央が政治決定を行い、習近平氏がその意向を中国政府に伝え、中国政府が国の運営をしている形なんですね。「中共中央」は「精神」と呼ばれる大きな施策方向を決め、「中国政府」がその「精神」に基づき国を運営しているのです。人間でいう、ココロとカラダの2つに分かれていると考えると分かりやすいかもしれません。
プラットフォームに話を戻すと、これら出版社を含む企業には一般の実務、行政スタッフ、社長とは別に、共産党書記が在籍しています。彼らが中央からの精神をプラットフォームに届けるのです。中国では各プラットフォームが中共中央の精神に従い、代わりに書籍、映像、ゲームの審査を行うのです。「精神」の解釈が各団体、企業毎に異なることがありますが、それに関しては「精神を勉強する会」などが開催されています。
また中共中央は実体媒体である紙媒体や円盤の出版社に対して「精神」を遵守させるため、出版数の制約を設けています。なぜなら実体物は影響が大きいと考えているからです。
ISBNという国際標準図書番号という書籍を管理するシステムがあります。一般的に日本では出版社から本がでれば、自動的に図書番号が付与されますが、中国では出版社毎に年間発行できる図書番号に限りがあります。このシステムをCSBNとも呼ばれたりします。
なので、限られた番号で利益を出る本を出さないといけません。
同時に出版物に対する審査も厳しくなります。一旦精神に合致しない本を出し、それが中共中央から指摘され、出版中止になった場合、年間発行できる番号を一部没収されてしまう可能性があるからです。
日本でも出版不況と言われていますが、中国では国の政策と市場のダブルパンチと非常に厳しい環境で戦っていると言えます。
ネットプラットフォームは自主審査しかありませんが、定期的に政府関連部門からチェックされます。
精神に適していないモノや問題が起こると罰金や社会的制裁を加えられることがあります。
たとえばCCTVで報道されたりすることですね。
CCTVでの報道では、禁止や買ってはいけない、とは言わず、不要不急の消費は控えましょう、といった言い方をします。これもまた「精神」ということなんでしょうね。
ちなみに個人的には詩音や梨花ちゃんがCCTVに登場することについては大変賛成です。
中国政府の規制について
では、どのような規制があるのでしょうか?引き続き「出版管理条例」を見ていきましょう。
条文には出版物には以下の内容が含まれてはならない、としています。
第二十五条
- 憲法の基本原則に反するモノ
- 国家統一、主権、領土を脅かすモノ
- 国家機密を漏らす、或いは国家安全、国家栄誉と利益を損なうモノ
- 民族紛糾や差別を扇動し、民族団結を阻害し、民族風習、習慣を侵害するモノ
- 邪教、迷信を広めるモノ
- 淫猥、賭博、暴力或いはそれらを教唆するモノ
- 他人を侮辱、誹謗、或いは権利を侵害するモノ
- 社会的道徳或いは優秀な民族伝統文化に危害を加えるモノ
- 法律、行政規定及び国家規定が禁ずるその他の内容を含むモノ
第二十六条
未成年を対象にした出版物には未成年が社会道徳を犯すことを促したり、違法犯罪を行ったりする内容や恐怖、残酷等の未成年の心身健康を阻害する内容を含んではならない。
これを見た限りだとかなり抽象的な条文であることがわかると思います。
具体的に、何がダメなのか、は審査する側、出版社やネットプラットフォームが判断することとなります。
そうなると、審査するプラットフォーム側も問題を起こしたくないので、拡大解釈することがあります。
いわゆる「忖度」ですね。
さらに中国のクリエイターも大体のラインは分かるけど、出してみないとわからないというのが実情です。
となると、「ひぐらしのなく頃に」はどうなるのかというとおそらく出版社とネットプラットフォームの自己検閲部門から以下の様に指摘されるでしょう。
▶「邪教、迷信を広めるモノ」
(ア)「あぅあぅ」は存在がアウト
▶「淫猥、賭博、暴力或いはそれらを教唆するモノ」
(ア)賭博禁止なので、金銭が絡まないとは言え学校のゲーム部はおそらくNG
(イ)鉈を振り回すレナはアウト、スタンガン持ってる詩音もアウト
(ウ)例の電話ボックスのシーンなどはアウト
▶「国家機密を漏らす、或いは国家安全、国家栄誉と利益を損なうモノ」
(ア)職権乱用の鷹野さんはアウト
▶「社会的道徳或いは優秀な民族伝統文化に危害を加えるモノ」
(ア)沙都子の家庭の事情もアウト
(イ)園崎家の行為は社会的道徳にそぐわない可能性あり
ということで、ひぐらしがひぐらしたらしめる最高の部分がほとんどアウトです。
個人的にはお祭りのタコのないたこ焼きは絶対ダメですね。
中国では、国の出版規制とプラットフォームの自己審査により、日本ほど自由な作品をリリースできない事がわかります。
まとめ
今日は情報量多くて、大変かと思いますが、頑張ってまとめましょう中国では作品を出すにあたって、
- 国の精神に基づいて忖度を行うプラットフォームの制約がある
- 保守的な国の制約がある
中国の規制が国のルールだけでなく、プラットフォーマーの忖度によって成り立っている事がわかって頂けましたでしょうか。
この「精神」というのは非常に厄介なもので、中共中央はホントに大まかな事しか言いません。近年は具体的な禁止事項も出してきていますが、ほとんどがここ数年の実施状況をみて具体化したものです。
例としては前紹介した「カードキャプターさくら」ですね。若年恋愛、近親相姦。
「ドクロ」も禁止ですね。おかげさまで大好きな「オーバーロード」が見れません。
ちなみに、最初に紹介した風刺漫画ですが、台湾的胱泌尿科診所-老培さん、という方が書いていて、中国本土のSNS微博で発表しています。
台湾在住の方のようです。中国大陸及び他国の2面性について風刺をされています。例えばこちら、欧米の人が新コロナウィルスについて意見を述べているモノですね。マウント取りたがる人達に対する風刺ですね。
もう一つは緑色の人物がテレビを見て反応する話です。
緑は台湾与党の民進党のカラーで、髪型から恐らく蔡総統を揶揄しているモノだと思います。
では、本日の動画ここまでです。
アニメで知る中国、ナビゲーターのミミムがお送りしました。
またね。
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北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは
2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。
参考資料
▶「陳暁夏代 × 峰岸宏行〜中国におけるパクリの現在地」https://note.kohkoku.jp/n/n49580f8a8942
▶台灣之胱泌尿科診所-老培 https://www.weibo.com/u/3899626091
▶出版管理条例 https://baike.baidu.com/item/%E5%87%BA%E7%89%88%E7%AE%A1%E7%90%86%E6%9D%A1%E4%BE%8B/7979815?fr=aladdin