台湾のサブカルチャーの中心地、台北・西門町にある日本の著名なイラストレーターや漫画家の作品の展覧会に特化したアートギャラリー『d/art』。
2017年11月にオープンしたばかりにも関わらず、既に有名イラストレーターOKAMA氏や漫画家の窪之内英策氏の個展を開いており、台湾でも指折りのACG(アニメ、コミック、ゲームの略)スポットといえる。折しも尊敬する台湾イラストレーター・漫画家のZECO先生がd/artのプロジェクトマネージャーSnow氏と現場マネージャーYukio氏を紹介してくれたのでレポートしたい。
―まずd/artが設立された経緯を伺いたく
Snow氏「d/artは2017年11月に開店したのですが、この話は実に2006年に開催した画展にさかのぼります。前年に台湾イラストレーターEvan Leeさんの画展を開き、それ以来毎年開催しているのですが、2006年に台湾北投の逢甲美術館で開催した村田蓮爾さんと7人の現代アーティストの画展でご一緒させて頂いた人々がこの画廊を開かせてくれた、とも言えます。
その当時からアニメ系画廊を作りたいと常々思っており、なかなか形にできなかったのですが、ここ10数年の間に多くの台湾や日本のイラストレーターさんと画展を開催していくうちに少しずつ考えがまとまってきました。
ある時よく展示会で使わせて頂いているある欧米系の現代アートを主に扱う画廊で画展を開いている時に、作家先生や一緒にいらした家族の休憩室がない、というのがすごくショックだったのです。やはり自分たちが自分たちのやり方で台湾に来られた先生方をもてなせる自分たちの画廊が必要だと強く感じました。
そして2017年に浅田弘幸さんの画展を開いたのが決定的になりました。このイベントは熊本大震災に被災された方々にお見舞いのメールをお送りしたところ、とある編集者からの返信メールをきっかけに浅田弘幸先生の展示会を開催することになり、その展示会に06年に画展を開いた人たちが協力して頂いたり、駆け付けてくれたりしたのです。その方たちに私の思いを伝えたところ、強く背中を押して頂きました。運よく考えに賛同してくれるスポンサーも見つかり、2017年11月にd/artを開設するに至ります。オープンエキシビションには窪之内英策先生にお願いし、講演もして頂きました。」
―なるほど、実に10年に及ぶ蓄積が今日のd/artに詰まっているのですね。d/artには多くの人の力と思いが詰まっていますが、現在d/artはどのように運営されているのですか?
Yukio氏「d/artは伝統的な画廊ではなく、2階の物販と3階の有料入場ギャラリーで構成されています。有料入場だということに驚かれる人も多いのですが、これは参観者のイベントの参加費、或いは協賛費という概念で頂いています。」
Snow氏「先生方の素晴らしいイラストを見る場所に対する寄付、と理解してもらっていて、来場者の皆さんには理解して支払って頂いてます。」
Yukio氏「3階で気に入ったイラストがあれば、それを購入して頂けます。イラストの横にある紹介文に張ってあるシールの数が販売された数ですね。
2階ではいままでd/artで開催したりコラボした作家さんの商品を置いています。こちらの日本で出版されている画集以外は、すべてd/artで独自に制作しているのです。」
例えば、この「OKAMA」先生のめくりイラスト集ですが、先生の作品には横に長いものがあり、それを切らずに画集にしたく、特別仕様になっています。これもd/artで印刷、制作できる印刷会社を手配して制作しました。
このようにできるだけ皆さんに先生の絵を楽しんで頂ける方法を模索した商品を作る事に注力しています。
Snow氏「これは私のわがままでもありますけどね。」
Yukio氏「新しい、正しい形のアニメ系画廊の形として実は最も重視しているのが、先生の休憩室と意見箱ですね。先生の休憩室は最大8人まで座れる空間とメイク用の化粧台を用意しています。これなら先生方やその家族が物置で座り込むことにはなりません(笑)これはホスピタリティーとして重要なところで、画展を開くにあたって、必ず先生に来ていただきライブドローイング、或いは講演をお願いしているので、d/artを作るにあたって、わざわざ作ったのです。
意見箱については、皆さんから生の声を頂くためにやっています。今はネット時代で、d/artもFacebookページもっていますけど、やはりアナログのユーザーコミュニケーションは重要だと思っています。実際いくつかの意見を参考に店舗の改良を行っています。
また週1回ほど、台湾のイラストレーターの先生に1時間ほどの来場者の交流を兼ねたライブドローイングイベントもやっています。」
―なるほど、作家さんとユーザーをつなげるという役割を担っているとも言えますね。
Yukio氏「はい、そして台湾だからこそできることもあります。例えば田中達之先生の画展が分かりやすいです。田中先生は日本では画展を開いたことはありませんが、台湾で初めての海外画展をd/artで開かせて頂きました。」
Snow氏「d/artは作家同士の交流にも重視していて、ライブドローイングの司会を別の作家先生にお願いしていたりしています。こうすることで、作家と作家、作家とユーザー同士のつながりが深まれば、よりよい文化に育っていくと感がています。」
―d/artの今後の展望をお聞かせください。
Snow氏「3点あります。1つは作家先生とユーザーのコミュニケーションをどこよりもよりよくしていくことです。先生の制作におけるプロフェッショナリズムをよりよくユーザーに伝える方法、そして先生の注目されている人気作品以外を着て頂いた人達に知っていただくことですね。
2つ目は芸術とは博物館や美術館に収められているモノだけではないということをより広く知ってもらうための施策を講じたいと思っています。
3つ目は2つ目と少し被りますが台北本店を足掛かりに今後台湾南部をはじめ、香港、中国本土にもこの文化を広められるよう、分店を展開したいと思っています。」
―最後にd/artを一言で表すなら
Snow氏「秘密基地、ですね。年齢に関係なく、立場関係なく、同じ趣味をシェアできる空間にしていきたいと思っています。」
今回素晴らしい画廊を紹介してくれたZeco先生(Link)、ありがとうございました。現在d/artでは「村田蓮爾展futurelog」が開催中(第一期4/14~5/6、第二期5/12~6/3)。
毎週金曜日にはd/art3階で様々な特別講座も開催されている。詳しくはFacebookを参照して頂きたい。
レポーター紹介!
2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。
d/art
住所:台北市萬華區武昌街二段14號2樓
電話:02 2383 0060(日本語対応可)
営業時間: 13:00〜21:30
公式サイト https://www.facebook.com/dartTaipei/