『アニメで知る中国』中国で古くから伝わる“武侠”とは?詳しく説明します

『アニメで知る中国』へようこそ!ミミム(北京MYC)です。

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さて、日本でも中国の小説が少しずつ評価され始めている気がします。中国にもサイエンスフィクション、所謂SFや恋愛、学園、法律、探偵、時代劇、宮廷劇、転生モノなどいろんなジャンルの小説、そしてコンテンツがあります。その中に、「武侠」モノ、というジャンルがあるのですが、日本人にはなじみが薄いんじゃないかなと思います。

これ、一体どんなジャンルなんでしょうか?

ナビゲーターがミミム本日お送りするアニメで知る中国 第21回は「武侠小説の基礎知識」です。

第21回アニメで知る中国「武侠小説の基礎知識」

中国近代文学の独特なジャンルとしては仙術が出てくる「仙侠」や古代朝廷の宮廷の話にクローズアップした「宮廷劇」、そして中華ファンタジーとも呼ばれる「玄幻」等々があります。

「玄幻」ってなんだよ、というと、中国ではSFを「科幻」、魔法を使うファンタジーのことを「魔幻」、というように「幻」はフィクションという意味をこの場合持っています。西洋の魔法と同じように不可思議でありながらも非常に東方哲学的な思想を「玄学」といいますが、これをベースにしたファンタジーモノを「玄幻」と呼びます。中華ファンタジーというのが比較的適切な言い方だとミミムは思っています。

ジャンルの名前からその意味を理解するとわかりやすいんじゃないかな、ということで、今回は「武侠」をクローズアップしますので、まず「武侠」の言葉の意味から確認してみましょう。

先ず、武侠の「俠」とは、己の信条に則って正義のために行動しようという精神。そしてその正義を表す方法が武術なので「武」、この2つを組み合わせて「武俠」と呼ばれています。

「近代以前の中国や空想世界を舞台に、正義の人が武術をもって様々な門派と戦ったり協力したりして正義を行う」というジャンルですね。ミミムなりに説明すると「超人中華時代劇」、あれ某ラーメンな男の人が出てきそうな話ですね。

武俠小説は、かつて低俗な大衆小説として馬鹿にされてたみたいですね。ですが、素晴らしい文章力と、歴史観に裏打ちされた作品を多く輩出した「武侠小説御三家」、金庸、梁羽生、古龍の登場によって、この評価は一変しました。

個人的には1967年から1969年、金庸が立ち上げた新聞「明報」で連載された作品、「笑傲江湖」という作品が好きです。笑傲江湖には「東方不敗」という人物が登場しますが、Gガンダムでは同名のキャラクターが活躍しました。

この「笑傲江湖」という作品を軸に武侠の基礎知識を見ていきましょう。中国明朝らしき時代背景にした群像時代劇で、秘伝書を巡る陰謀、正派と魔教の戦い、魔教内部のクーデター、正派どうしの併呑など、数々の事件が巻き起こる、というストーリーですが、これだけで結構「武侠」ジャンルの基本的な構造がわかると思います。

時代背景

武侠モノの時代背景は基本的に中国の春秋戦国時代から最後の朝廷清代までの近代以前が舞台になります。現代に武侠要素を持ってくるのもありでしょうが、この世界観のほうがやっぱり自由でいいですよね。オーソドックスな武侠モノは時代劇、と覚えておきましょう。

正派と魔教の存在

武侠モノは「剣術流派同士の戦い」と「イデオロギー同士の戦い」がミックスしています。なので、まず「正義の側である正派」と「邪悪な派閥」として、正派と魔教という対立構造があって、それぞれの対立構造の中に、異なる剣術の派閥がある、という感じですね。

たとえば、笑傲江湖では正派として「五岳剣派」の5つの剣術流派の他に少林寺派、太極拳を起こした「張三豊」の「武当派」があります。そして魔教としては「日月新教」と「五仙教」という2つがあります。

作品内では五岳剣派の5つの流派間の思惑に基づく「流派間の戦い」、そして大筋の正派と魔教というイデオロギー間な戦いが起こるのです。

秘伝書の存在

秘伝書とは「技や流派の秘伝書」です。笑傲江湖でキーとなるのが林遠図が生み出した「辟邪剣法」の「秘伝書」です。

秘伝書を奪うために一家皆殺しとか、すごいことが起こりますが、林遠図はこの辟邪剣法で天下最強となりました。「天下を掌握する」ことができる「技」を巡って「物語が動く」というぐらい「流派」や「技」は重要なものなのであるということがわかります。

なんで技如き、ゲームで言う「スキル習得」にここまで大げさなんだ、と思っている方も多いかと思いますが、「江湖最強」や「江湖統一」に命を懸けている登場人物には非常に重要な話なのです。

技を話すうえで避けては通れない「武侠」の基本仕様が「剣法」と「内功」です。技を繰り出すときのダメージは「剣法」と「内功」が関係してきます。

分かりにくいかもしれないので一般的なPRGに例えてみましょう。「剣法」はSTRやAGIなどのステータス、「内功」はMPみたいなものという前提だとすると、武侠の世界では「スキルを発動する際、ステータスの数値の他にMPを追加消費すると与えるダメージが増加する」と理解すればよいかと思います。

ところがこのMPに相当する「内功」のダメージ倍率が+ではなくxなので、内功を鍛え上げた人は常人以上の技を発揮することができます。

内功は内力、気功、と様々な呼ばれ方をしています。要するに呼吸を通して万物星辰の清気を吸込み、自分の中の先天、後天的に得た「気」に混ぜ込んだ体の真気の事です。内功の最高境地は「身知」といって「体が気の巡りを知っている」状態です。基本的に武侠作品に出てくる「高手」と呼ばれる達人はみなこの技術を身に着けています。

東方不敗がもともと所属していた「日月神教」の教祖「任我行」は相手の「内功」を吸い取ってしまう「吸星大法」を編み出し十八番としていますが、映画の中では使われ、絶命した相手の体が紙を丸めたようにクシャっとなるのは、体の気を全部吸い取られてしまったからなんでしょうね。「身体力」より「気力」のほうが武侠では重視されているのが垣間見られる描写です。

また東方不敗が習得し、江湖最強たらしめた「葵花法典」は宦官が作った流派で、習得には去勢が必須条件という、結構すごい設定です。中国では「走火入魔」という四字熟語があり、何かにとりつかれたかのように夢中になる、という意味ですが、中国では「良くない意味」で使われます。あまりに「最強」に魅せられ、気が狂った東方不敗、力を得たが何もかも失った魔教達人の鳴れの果て、という「魔教の恐ろしさ」を技を通して表している気がします。

香港映画版では女性である「林青霞」さんが演じ、小説とは少しイメージが変わっていますけども、私は林青霞の演じる東方不敗は好きです。攻殻機動隊の素子に近い感じがします。

女性がやたら強い

女体化したらやたら強くなった、というキャラがいるのに違和感を感じないのは、おそらく金庸作品に出てくる女性がやたら強いからです。

武侠作品では通例ではありませんが、とりあえず武侠作品を代表する金庸氏の作品では女性がやたら強いイメージがあります。日本のアニメ作品でも昔から剣を持って主人公を助ける強い女性が描かれてきたので、なんとなく親近感を覚えます。

笑傲江湖では、主人公「冷狐沖」が魔教の娘と一緒に旅したり、同じ正派であるはずの嵩山派から妨害を受けたりと波乱万丈な王道の作品です。

作品名の「笑傲江湖」とは江湖、所謂、世の中の決まりを笑い飛ばすという意味が含まれており、「正派」と「魔教」という分け方はあいまいであることを示しているようで、実際に作品中では「正魔」を超えた友情や愛情が描かり、逆に「正派」や「魔教」内での内紛が多く描かれています。

 編集後記

武侠御三家の作風を日本の漫画に例えると起伏は大きくないが長く見れる梁羽生はナルト一動作毎の描写が細かいがとりあえずカッコいい古龍はブリーチキャラクター性、ストーリーが非常に秀逸な金庸はハンターXハンターというのがミミムの印象です。

武侠小説、本当に面白いのですが、何から読めばいいのか、という場合は今回紹介した金庸氏の「笑傲江湖」が一番だと思います。

2018年10月30日、武侠界のスタン・リーに相当する金庸は鶴に乗って西天に飛び立たれました。

飛雪連天射白鹿 笑書神俠倚碧鴛

こちら、異色の武侠作品「鹿鼎記」のあとがきに記されており、金庸氏も特別詩の内容については言及していませんが、ミミムが独自に読み解くと、飛雪の日が続く中 私は白鹿を射る 書を笑い読む神侠 碧き鴛に寄り掛かるという武侠的な風景が広がる気がします。金庸氏は今日の江湖を見渡して、西天でどのような笑顔を見せているのでしょうかね。

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では本日の動画ここまでです。

本日ナビゲーターミミムがお送りしたのはアニメで知る中国 第21回は「武侠小説の基礎知識」でした!また次も見てくださいね!

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北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは

2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。