ナビゲーターのミミムです。
みなさん、中国のアニメって全部パクリだって思っていませんか?
それは大きな誤解ですよ。
最近配信されている「大理寺日志」もいいんですが、中国の古いアニメにも邋遢大王奇遇記、魔方大厦、黑猫警长など実にレベル高いアニメがあるのです。
今日はこれらの、中国人が子供の頃強烈なインパクトを受けたアニメから、なにか学びのヒントはないか、探っていこうと思います。今回紹介するのはさっき上げた三本のアニメのうちの一つ「邋遢大王奇遇記」です。
※ 本記事に掲載のYouTube動画には一部暴力的なシーンが含まれます。
目次
『アニメで知る中国』第33回「お家で見たいヤバイ中国アニメ①」
中国のアニメ不潔大王奇遇記について
日本語でいうと「不潔大王奇遇記」は上海美術電影制作廠が1987年に制作した1話10分、13話構成のアニメです。「不潔大王」はミミムが勝手につけた名前です。元々「邋遢」とはだらしない、薄汚い、という意味があります。ですがだらしない大王だと、長いのでミミム訳ということで「不潔大王」としました。
それと確か「邋遢大王歴険記」というタイトルだったはずですが、いつの間にか奇遇記になっていました。ピノキオの中国語版タイトル「木偶奇遇记」に合わせたのかもしれません。
1987年といえば、日本ではアニメ三銃士、赤い光弾ジリオン、気まぐれオレンジ☆ロード、ミスター味っ子の時代です。ゲームでは、ロックマン、ファイナルファンタジーが第1作目をリリースしました。そしてマイケル・ジャクソンがワールドツアーで初ソロ来日した年でもありますね。
ちなみに、ミミムは鮎川ではなく、桧山ひかる派でございます。
不潔大王奇遇記は日本の当時のアニメに比べたら、画質、キャラデザなど比べモノにはなりませんが、このアニメは現在の中国がアニメに対する規制からは考えられないほどバイオレンスな作品で、中国の子供たちに大きなインパクトを残しました。
主人公は「不潔大王」と呼ばれ、彼はものを食べれば地面に落とし、飲み物を飲めば服を汚し、「不干不净、吃了没病」、汚いかどうかなんてあまり気にするな、食べても病気には掛からない、といって何でも食べてしまうような子です。
そんな不潔大王君の日々のだらしない行為に目を付けた口尖り鼠が飲み物にスモールライトならぬ、スモールボールを入れて不潔大王の体を鼠と同じ大きさにしてしまいます。口尖り鼠は不潔大王を、自分たちが占領した地下墓地、「鼠王国」に連れて行き、不潔大王の冒険が始まります。
実はこの鼠王国では全人類を抹殺するための秘密兵器である、ウィルスを作り上げていました。
その実験体に不潔なモノでも食べちゃう不潔大王を選んだのです。
不潔大王は白鼠、黄色猫、灰色の犬の力を借りて、様々な鼠の追跡を振り切り、最後は鼠大王の娘の結婚式を利用して無事地上に帰り、生活習慣を改めた、というお話です。
本来なら、「見る」のをお勧めしたいところですが、なにせ古いアニメなのと、全編中国語。なので幾つかストーリー上の「ヤバイ!」部分を紹介しようと思います。
「年取ると生き埋めにされる老鼠」
このシーンでは、年を取って盗みを働けなくなった鼠たちが生き埋めを逃れるために王国を離れて乞食をしているシーンです。まさに姨捨山のようなものですね。老人は敬いましょう、という事でしょうか。
「目をえぐられる鼠」
鼠兵長に嘘をついたと誤解されて、目をえぐり取られてしまった鼠です。人体欠損表現が堂々とされているところに、1987年という時代を感じます。
「ガソリンの匂いが好きな鼠王」
こちらの鼠王国の王様、めっちゃあくびしています。眠たい時は朝ココ…いやカフェインを摂取するものですが、こちらの王様、何とガソリンの匂いで頭をすっきりさせます。なかなかキマッてる王様ですね…。まねしてはだめですよ。
「白鼠の耳を人質に取る口尖り鼠」
白鼠が不潔大王を庇っていると知った口尖り鼠、同族の耳を引きちぎろうとします。このアニメの口尖り鼠は中国で最も嫌われる「小人」、「小物」と呼ばれる役柄になりますね。
「しっぽを切り落とし血がどぱー」
白鼠を逃がすため飛び出した不潔大王ですが、目をえぐられた鼠から奪ったナイフで口尖り鼠のしっぽを切り落とし、血がどぱー!っと出ます。今の時代は流石にこの表現はできないっすよね。
「黄色鼠が相打ちで血まみれ」
口尖り鼠の護衛についてきた黄色鼠の武器はその鋭いくちばしですが、すんでのところで不潔大王が攻撃を避け、相打ちで血まみれになります。これも今の中国ではもう見られない表現かもしれません。
「ドSの白鼠」
こちらの白鼠、実は先ほどの鼠と同じ白鼠ではないんです。それとは知らず不潔大王はついていくのですが、道中意地悪をされます。かなりドSですね。
「未成年に飲酒を進める鼠」
騙された不潔大王は本物の白鼠と共に閉じ込められます。アカネズミたちが酒盛りをしているのですが、なんと未成年と思しき不潔大王に酒を進めます。未成年飲酒は日本の法律で禁じられます。
「カビで変色してしまった主人公たち」
近所の黄色猫、灰色の犬と再会した不潔大王ですが、カビだらけの部屋に入ってしまい、カビでおかしな状態になってしまいます。黒鼠たちは体に黒い酢を塗っているので、カビの影響を受けないという設定のようです。
「白鼠の死」
今作のヒロイン枠、白鼠が死んでしまうシーンです。今大人気のファイナルファンタジー7のエアリスの死を先取りしていますね。さすが上海美術制片廠ですね。恐れ入りました。
「宝石よりカラーテレビの姫」
鼠王国は即物的な描写が多いのですが、そのもっともたる例が、鼠大王の娘の結婚式のシーンです。新郎の結納物で一番に紹介されるのがカセットプレイヤーであることも驚きですが、金銀財宝よりテレビに対するリアクションの大きさといったら、比になりません。子供がテレビばっかり見てたら、鼠大王の娘みたいになるよ!って親がいいそうです。
まず感想ですが、このアニメにはみんなの生活習慣を変えていこう、という制作者の強い願いが込められているように思います。
「不潔大王」が自分の生活習慣を変えていったことが最も顕著ですけど、カビは恐ろしいとか、ガソリンを嗅ぐことは鼠大王と同じで良くないこと、或いは酒を飲むとひどい事になるぞ、と色々考えて作られている作品だと感じました。
まとめ〜本日の中国語「接地気」とは
このアニメで実はミミムが一番重要だなと思うのは「接地気」です。自分たちの感覚や生活とかけ離れていない事、を中国では「接地気」(地気に接する)といいます。元々は、地の気を得る事で安定した生活を送れる、といった意味だったようで、この土地は非常に住みやすい、という事を表現する言葉だったようですね。これは中国では良いことだと認識されています。い
までは、「最接地气的动画」(最も人気のアニメ)「那个学生的发明很接地气」(あの学生の発明は非常に役に立つ発明だ)というように、広く誉め言葉で使われています。
本作では鼠王国のモデルは中国の古墳なので、物語の途中様々な中国の歴史的な美術品が出てきます。日常生活を反映したようなアイテムをところどころに配置しています。
例えばこちら。なんとFuji Filmと書いてあるモノが出てきたりします。
これらは全て「地気に接する」ってことだと思います。
「地気に接する」によって、この作品が実は身の回りのどこかで起こっているのではないか、と感じる事が出来ます。
そして何より「地気に接した」コミュニケーションは人と人の距離を縮めることができます。今回作中でFuji Filmを見たとき、ミミムはすごく感動して何度も二度見しました。何度も二度見ですよ。この作品に今まで以上の愛着がわいたような気がします。
それによって「地気に接した」コミュニケーションの大切さを再認識出来たような気がします。今後も「接地气」のミミムになっていきたいですね。
如何だったでしょうか?皆さんも何かご意見がありましたら、コメント欄にコメントお願いします。
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北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは
2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。