アニメで知る中国にようこそ、ナビゲーターの岸嶺ミミムです。ミミムのチャンネルをいつも見て頂いている方、ありがとうございます。
ミミムは台湾に13年、北京に18年滞在して、今は中国でゲーム関連のお仕事をしています。例えば日本の声優さんのアフレコ制作、楽曲制作、オープニングアニメ制作、イベント制作とかですね。プログラミング以外のほぼ全ての部分をやってます。
そんなミミムが今日話す内容は、タイトルにあるように「ホロライブの炎上」から日本コンテンツの海外進出についてです。
なんでミミムがVTuberの話をするかというと、2017年の3月にAnimeJapanでキズナアイを見てから、VTuberという存在に強烈な印象を持ったからですね。その後、私の敬愛するバーチャルエコノミストVTuberさんのDiscordグループに入って、メンバーの皆さんに色々教えてもらってからホロライブ、にじさんじにも注目しました。
中国におけるアニメ・ゲーム関連の炎上は間近で見てきましたし、アーティストの炎上も多く見てきました。今回はミミムの中国での経験をもとに、お話させてもらいたいと思います。
『アニメで知る中国』第45回「ホロライブ炎上から見る日本コンテンツが海外に展開できない理由」
サメ台風さんという方のNoteに分かりやすくまとめてありますので炎上についての経緯などはそちらを参照して下さい。
「ホロライブ炎上」と歴史的背景について
桐生ココさんや赤井はあとさんに対する良し悪しを判定することは日本人である私からすると難しいし踏み込みたくないものです。なぜ、難しいのかを理解するためには歴史的背景について理解する必要があるでしょう。
中国と台湾の関係は日中戦争前に遡ります。国民党と共産党に分かれて戦っていた時代、日本と戦うため共闘した時代、日本が敗戦した後の内戦時代を経て、最終的に蒋介石率いる国民党は台湾に撤退し、毛沢東率いる共産党は1949年10月1日、中華人民共和国を設立しました。
台湾には古くは「原住民」と呼ばれるアボリジニー系の人々が住んでいました。明や清時代には中国大陸から客家、漢民族の人々が移民し、蒋介石の台湾撤退時にまた多くの人が移住しました。彼らは「外省人」と呼ばれています。近年はこの概念も薄くなっていますが、少なくとも90年代までは色濃く外省人の存在を住民は感じていたことでしょう。なので、原住民を含む「内省人」は、今の台湾問題はあくまで「外省人」がもたらした問題であり、我々は理由もなく「国民党」に接収されたのであって、関係ない。この考え方がベースとなっています。
「内省人」という呼び方があるなら、台湾は自分たちを台湾省と認めていた?って思うかもしれませんが、これは実は国民党が「いつか俺たちは大陸に反抗して正しい政府をつくるのだから、ここは省であって国の最終形態ではない」という考えがあったからと言われています。
で、少しずつ内外の意識も薄れていきますが、現在「我々は違う」という概念の根本を作っているのは、おそらく日本人と同じ考え方です。「中国共産党」に対する「マイナスイメージ」ですね。一部の方は「共産党でなければ考えうる」という人もいます。日本は武力的脅威を今は受けていますが、台湾は昔から金門島砲戦があり、台湾総統総選挙に合わせた大陸側の台湾海峡ミサイル演習など、または密航者等で大陸に対して非常にマイナスなイメージを抱いています。歴史的背景の強固なベースとここ数十年の大陸との戦争無き戦争が重なってるのが現状ですが、台湾も一枚岩ではありません。
大陸側の話もしましょう。大陸は領土喪失、特に現政権においては、大きなトラウマです。モンゴル国が一つの例で、1921年にモンゴル国は独立しますが、当時袁世凱率いる中華民国政権はこれを承認していませんでした。1945年、中ソ友好同盟条約にて、やっと中国から独立したことになっています。
モンゴル人としてはソ連に助けられ、中国から独立できハッピーなんですが、中国としては、当時のソ連が強力な政治力と軍事力によってモンゴルを自分の属国として独立させた、と映るでしょう。ちなみに実は1961年まで台湾当局も長らく公式にモンゴルを国として認めていませんでした。モンゴルは1961年に国連に参加します。お気づきかもしれませんが、ソ連と中国は同じ共産国で、中国はコミンテルンの支援を多く受けていましたが、決して仲が良いとは言えません。領土紛争は良く起きていました。
こういう事もあって中国は領土保全にはかなり気合を入れています。
「中国と台湾の問題は“さわらぬ神に祟りなし”」という考え方
中国からすると台湾に関しては「欧米当局による中国領土に対するサボタージュ」という意識が強く働いており、特に旧総書記の江沢民氏在任時代、その部分が顕著に出たように思います。という中国台湾の話ですが皆さん如何でしょう?少し台湾について理解してもらえたでしょうか?
こういう背景がありますが、結論としては、中国台湾問題は複雑で“さわらぬ神に祟りなし”。という事です。
上記の背景話を前提に、
- 中国大陸の一部の人は、時期によって台湾問題に敏感になる
- 台湾側は中国と一緒にされたくない
- これは日本人が立ち入ってどうにかなる話ではない
という事がわかると思います。
なので、中国台湾に関しては、より慎重さが求められます。
では次に今回の最大の問題「タイミング」について話をしたいと思います。
最大の問題「タイミング」
事件発生のタイミング
10月1日は中華人民共和国の建国記念日なんですね。で、桐生ココの例の配信が25日。愛国者の活動に火が付いたところに薪がくべられた形になったといえるでしょう。 この問題には中国ホロライブファンとファン以外の方が絡んでしまって全体的に複雑にしている要因だと思います。
謝罪のタイミング
実はもう一つのタイミングがあります。それがカバー社の謝罪のタイミングです。本来なら、私の考えですが、もし謝罪するなら、当日するべきでした。これには良い前例があります。「ヒロアカ丸太事件」ですね。この事件の内容については、個人的には批判者考えすぎじゃね?ってのはありますが、問題なのは謝罪が「中国側に言われて」というイメージが付きそうな事件発覚から4日後、という部分でしょう。書籍の発売が3日で炎上のその前後で、7日に謝罪文書を出してますが、もっと早く出すべきでした。謝罪すべきではなく、タイミングの問題です。
今回の桐生ココも謝罪するなら当日でした。キズナアイ台湾事件もあったのに、そういうのを想定していないとは言えないでしょう。さらに、カバーは6月にチベットを国として扱って炎上してます。
本件は本当に「中国台湾問題」など複雑に絡まっていますが、要はタイミングだったわけですよ。これは所謂、日本の終戦記念日に原爆に関するツイートを外国人とか、BTSが原爆Tシャツを着てしまうとか、そういう話なんですね。明治維新時代の日本なら、アイヌ問題もあるかもしれません。
インドでは牛が殺せない、イスラムでは女性は髪を隠さなければならない。或いはイスラエル・パレスチナ問題、ギリシャ・トルコ問題と、世界中で文化や価値観の違いというのは多いんですよね。
日本から「海外」を狙うのであれば、どうしてもついて回る問題になります。
最後に
最後に、私が言いたいのは「中国がおかしい」というわけじゃないですね。背景で説明した通り、タイミングや立場上、中国のプラットフォームでそのような言論があった場合、言わないといけないわけですよ。でなければ、必ず誰か反応しますし、それに対して他の人も「別にいいじゃん」と思っていても、そうとは言えないでしょう。政治部分に関しては同調圧力なんです。
もう一点がやはり「郷に入っては郷に従え」なんです。日本人だって、中国人の観光客見て、色々言うじゃないですか?あっちにはあっちの価値観があり、こっちにはこっちの価値観があるんです。「ナショナリズムを押し付けるな!」は全くの正論ですが、中国人の金を儲けたいなら、現地人の気持ちは守らないとじゃないですか。
現在、中国側のSNSなどを見ると、一旦は収束に向かいそうです。ですがこれがよかったかというとそうではないとは思っています。ホロライブの取った行動が今後大きな枷になる可能性があるかと思います。それがどのような形になるかはわかりませんけど。
最後のトピックとして、海外進出で気を付けないといけない事を過去の事例を見つつ考えていきたいと思いますが、詳しくは配信動画をご視聴ください。
では、今回のアニメで知る中国、本日はここまでです!
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北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは
2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。