現在放送中のTVアニメ『このはな綺譚』。
その独特な世界観には時々「日本の神話」が登場しますよね。
第9話「泡沫の…」では特に『日本の神話を知っておかないと話がよく分からない!』と思われる方が多かったのではないでしょうか?
今回は、アニメ「このはな綺譚」第9話「泡沫の…」を見る際に知っておきたい、「日本の神話」について少しだけご紹介したいと思います。
【注】本記事は、主に海外の方向けに日本の歴史を噛み砕いてご説明する記事になります。諸説ある内の一説をご紹介するもので、詳細は記しておりませんのでご了承ください。
このはな綺譚 9話で知っておきたい「日本の神話」
アニメ「このはな綺譚」第9話「泡沫の…」の最初のお話は「柚が亀を助けて……」というお話。
まずは、その後の『アワナミ様』が登場したお話からご紹介させていただきたいと思います。
「日本誕生」から遡る
作中にも登場してきた「古事記」。
この「古事記」というのは、簡単に言うと「日本最古の歴史書」。
日本がどうやって誕生し、どう繁栄してきたのかが記されている、とされています。
その古事記では、男性のイザナギ(=イザナギノミコト)と女性のイザナミ(=イザナミノミコト)が日本という国を造ったとしており、このイザナギとイザナミの、いわゆる“孫”に当たる存在が、第9話に登場した「アワナミ様」というわけです。
ちなみに、作中でも棗(なつめ)が言っていたように、アワナミ様の歴史書上での呼称は「沫那美神(あわなみのかみ)」と言い、「泡の神様」とされています。
柚が泡の中で見た「この国の記憶」とは?
柚が「チビナミ様」に飲まれた際に見たあの幻覚は、まさに『日本誕生』の瞬間を描いています。
第9話の、そのシーンをもう一度見返してみると、雲の上から剣を海の中に刺してグルグルと回している男性がいますよね。それが「イザナギ様」。その隣にいる女性が「イザナミ様」なのです。
そして、剣(正しくは矛)を海の中で回していると、泥のようなものが広がっていきます。この“泥のような”ものが広がってできたものが「日本において初めてできた島」とされています。
※この島が、現在の日本のどの島に当たるかは諸説あり、兵庫県の「淡路島」だという説もあります。
また、泥のようなもの、の正体は「潮」。この潮が広がって「オノゴロ島」(もしくはオノコロ島)が出来、これが日本において初めてできた島だと、古事記では記されています。
そこから様々な長い時を経て、今の「日本」があるとされているのですね。
つまり、柚が見た幻覚こそ「日本誕生の瞬間」つまり、サブタイトルになっている「泡沫の(夢)※」と考えて良いでしょう。
※泡沫の…すぐ消えてしまう儚いもののことを指します。
Aパートで登場した「ヤマサチヒコ」とは?
「柚の見た幻覚の正体」と「アワナミ様」は少しだけ分かっていただけたと思います。
ではその前の、Aパートでのお話、柚がカメを助けて…のお話に登場してきた「ヤマサチヒコ」について、最後に少しだけお話させてくださいね。
(「ヤマサチヒコ」というワードは、柚が池で溺れた直後に登場しますよ!)
カメが「この私がワダツミの宮殿までお送りしたのです!」と嘘を付き、みごと柚にバレてしまったあのシーン。
ヤマサチヒコという方は、コノハナサクヤヒメ(木花咲耶姫)の子。
作中では、桐が「山幸彦様なら大火事の中で生まれたくらいだし、水中も平気そうだけどね。」と言っていましたよね。
実はこの「ヤマサチヒコ」と「コノハナサクヤヒメ」はとんでもない人物なのです。
火の中で生まれた「ヤマサチヒコ」
「コノハナサクヤヒメ」は「ニニギノミコト」と結ばれます。
その二人の初夜の後、コノハナサクヤヒメはすぐ子供を身ごもります。
しかし、早くも初夜で「コノハナサクヤヒメ」が妊娠したことに対し、あろうことかニニギノミコトは
「こんなに早く子供が出来るのはおかしい。…もしかして、コノハナサクヤヒメのお腹の子は、自分の子では無いのでは!?」
と疑ってしまうのです。
これに対して「コノハナサクヤヒメ」は大激怒。
「コノハナサクヤヒメ」は、
部屋に火をつけて、もし子供を出産することが出来たらこの子は正真正銘アナタと私の間の子供よ!
と言い放ち、結果、火の中で無事に出産し「ニニギノミコト」との子であることを証明するのです。
※日本神話において、「賭けで勝利すること」で身の潔白を証明する、というエピソードは多々見られます。
この時生まれた子供が「ヤマサチヒコ」。
だから桐は
「山幸彦様なら大火事の中で生まれたくらいだし、水中も平気そうだけどね。」
と言ったのです。
このはな綺譚―日本の神話がたくさん登場!小ネタに気付けるかな?
アニメ「このはな綺譚」。作中には、今回の話以外にも様々な「日本の神話」などの「小ネタ」が隠されています。
日本の神話は、日本人でも頭を抱えてしまうような難しさがあるかもしれませんが、知ってみると意外と面白いもの。
今回のコラムの反響が良かったら、アニメ「このはな綺譚」で登場した「日本の神話」や「日本の文化」などについてのコラムも書こうかなと考えていますので、よろしければtwitterや掲示板で感想をお聞かせいただければ幸いです。
引き続き、アニメ「このはな綺譚」を楽しんでご覧くださいね。
©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会