『アニメで知る中国』京アニ事件―復興、再建に必要なことは?葛仰騫氏と語ってみた

『アニメで知る中国』へようこそ!ミミム(北京MYC)です。

7月22日、NHK「クローズアップ現代(以下、番組)」で京アニ特集があったその中でミミムの長年の友達、葛仰騫(かつぎょうけん)さんが登場しました。葛さんは中国で2000年代雑誌編集として活躍していて、3000(さんちぇん)という名前で知られています。3000さんは様々なアニメ監督のインタビューや当時から中国にスタジオを持っていたマッドハウス、今でも中国に本拠地を置く手塚プロダクションの中国スタジオ「北京写楽美術芸術工芸品公司」などに対する取材や自分の趣味も相まって、中国では非常にアニメの深い、作画やカット割り、そして思想というところまで切り込んだ雑誌「24格」を立ち上げてます。

3000さんは番組内でNHKのインタビュアーにこう答えました。

募金もよいのですがもっと大切な事は出来る限り業務上で協力して支えていくことです。私は京アニの作品をもっとたくさん中国で紹介し、その素晴らしさを伝えていくつもりです。

ミミムはこれについては特に違和感は感じず、人それぞれ支援のやり方があるのではないかと、感じました。しかし数日後、中国の大手動画共有サイトbilibiliにてにこんなスレッドが立ち上がっていました。

今日私が聞いた一番恥知らずな発言。

版権を輸入するのは京アニに対する援助?寄付するなら寄付、援助なら援助だろ、災難にかこつけてお金儲けするつもりか?京アニ事件の前、誰が倍のお金、三倍のお金を払った?アニメ版権が輸入されてからどれだけ費用が高騰したのか、誰のせいだと思っている?ああ、今はみんなお金使い切ったから、誰も配信権買おうとしてないけど、版権価格は少しずつ下落していくだろう。あなたもその負け組の一人だろうけど、今日また立ち上がって買おうだって?恥を知らないのか?

この発言を要約すると番組内で3000さんの発言が「災難にかこつけて金儲けを企んでいる。」というものです。

番組が放送された日、アニメニュースサイトJMAG NEWS(ジェイマグニュース)で、丁度3000さんの書いた京アニ追悼記事の翻訳版が配信されたので、そちらも拝見したところ、どうも番組だけでは話しきれていないのでは?と思い、3000さんに番組について電話で聞いてみました。

― ― 京アニの作品を買って支援するという話をしてたけど、あれは本当?

3000「いや…そういう話はしていないし、どうしてそのように解釈されたのかも分からない。」

ということで、もう少し3000さんに語ってもらう必要があると思ったので、早速電話でインタビューした内容をご紹介します。ミミムも中国語を話しているので、日本語字幕でお楽しみくださいね。本日のアニメで知る中国は第19.5回「NHK出演の葛仰騫氏と京アニについて語ってみた」です。

第19.5回『アニメで知る中国』NHK出演の葛仰騫氏と京アニについて語ってみた

― ― いやーすみません、今、日本にいるんですよね。

「そうなんだよ、ははは。」

― ― この前、書かれた記事、“燃えたのは過去と未来”ですが、日本のTwitterでも、結構拡散されているみたいですよ。

「(NHKの)インタビューで答えた内容は、ほとんどあの記事のまんまだよ。ただ、今後どうやって将来的な問題を解決するか、ってのは新しい問題だったね。この質問に関しては、結構真面目に答えさせてもらったよ。」

― ― 日本のメディアは、京アニの今後の事についてどのように提示しようとしているのでしょうか。

「日本のメディアは京アニが今後どうするかについては感心がなさそうだね。今回の件は無差別殺人事件としてのみ報道していると思う。」

― ― 今のところ国内ではアニメイトと日本動画協会以外からは、あまり表立って支援しようという動きはないように感じますが、どうでしょうか。

「そうだね。まず冷静になろう、最後の結果が出るまで何も言わないでおこうって感じで、明確に何か表明してるわけでもない。唯一、一番の仲間といえるサンライズが支援すると声を上げていたね。

この問題に対する私の意見はシンプルだよ。まず寄付をしたり、花を捧げたりするのは良いことだけど、「杯水車薪」(焼け石に水)ってことだ。失ったものはとても大きい。実際に失ったモノの価値には遠く及ばない。これらのお金は緊急時にはあり難いが、根本的な解決には至らないと思う。これらのお金は傷を癒したり、善後には非常に役に立つだろうが、会社が傾いているという事実を解決するには至らないだろう。

実は、事件が発生した直後に、もし海外の会社から資本を入れる事ができたらとか、いろいろ考えたけど、これって、火事場泥棒って言われかねないよね。そして、こんな方法は結局「雕虫小技」(取るに足らない小細工)でしかないんだ。根本的な解決にはならない。お金があったとしても、人が亡くなってしまったのには変わりないからね。だから、まず私たちにできることの一つとしては、もっと声を上げてこの半壊してしまったアニメ会社がどんな偉大なことをしてきたかを周知させること。

もう一つは、みんなが参加できるようにすること、そして、多くの若者が京アニという会社に就職するよう鼓舞することだと思うんだ。」

― ― 人材の確保が重要ということですね。

「そう、いま一番損害が大きいのは、そして救い戻せないのはまさに人材だからね。過去の資料がなくなったとしても、なくなってしまった、で済むかもしれない。お金が無くなったら、みんなで寄付すればいい。でも人が亡くなったら、本当に亡くなってしまうんだ。だから、大量のアニメに従事したい人達が京アニに入るしかない。さらに中国で中国のアニメの技術がよいと自負する人たちも、京都にトライしに行ったらいいと思う。自分の腕を試すためにも。

しかし、これはもしかしたら、私が中国人だから、今後どうしようってことばかり考えてしまうのかもしれない。だから、番組内でも私の発言は「業務的な提携」や「アニメ作品を購入しよう」っていう形で理解されてしまって、人材の流入が京アニにとって一番、という意味をくみ取ってもらえなかったのかもしれない。

ともあれ、(今回の事件は)ひどすぎるよ。今後京アニがどうなるか本当に予測ができない。」

― ― どれぐらい再建に時間かかりますかね。人材の育成って大変じゃないですか。

「うーん。京アニはこれまで30年の歳月をかけてきた。この30年は日本のアニメが“無”から“有”になるまでの時間だからね。確かに今の人材育成や教える技術は昔より簡単になったとは思う。でも、今は業界全体が盛り上がって一緒に成長している状況じゃないよね。京アニの発展には、例えばサンライズやシンエイのような、大きな会社からの大量の下請け業務が必要で、その業務によって成長し、人材育成が可能になったと思うんだ。でも今の時代、みんな下り坂じゃない。京アニは上り坂だった。みんな京アニがけん引してくれると期待していたのに、京アニが…。

いま、成長できる空間がないんだよ。成長してきた環境が無くなってしまった。そして、誰もが京アニが新しい成長をできる空間を作ってくれると期待していたんだけど、それが今こんなことになっちゃって。だから予測が難しい。30年で足りるかって?本当分からないよね。同じ30年の時間をかければ同じように発展するかって言ったら何とも言えないよね。」

― ― なるほど。ということは、アニメ業界全体の成長期で様々な業務があったからこそ。

「そう!彼らは列車に乗ったんだよ。日本アニメの黄金時代の列車にね。さらに京アニは2007年の“涼宮ハルヒ”と“ルルーシュ”の波にも乗ったんだよ。みんなが上り坂の列車だった。でも、今の時代、誰がいるんだって話だよ。誰も一緒に上ってくれそうにないよね…。」

― ― 本当に難しいことですね。

「うん。」

― ― 今回京都は行ったんですか?

「いや、今回は東京で打ち合わせに来てるんだ。」

― ― 募金はしに行きましたか?

「ここ数日忙しくて、アニメイトの営業時間内に間に合わない。明日行ってみようかと思う。」

― ― 本日はありがとうございました。

「いえいえ。」

3000さんが言っていることをまとめると『京アニの人材をいかに確保するか』と『日本のアニメ業界が盛り上がり、産業全体が盛り上がること』、この2点が京アニ復興に不可欠だという事ですね。

編集後記

京アニ718事件はまだ終わっておらず、海外から多くのエールが届いています。

何ができるのか、何をすべきなのか、周りの人と相談し、力を合わせ、向き合っていくことが今回の事件に心を痛めている私たちがしていくべきことだと、私は思います。

皆さんいかがでしょうか?では、本日の動画ここまでです。アニメで知る中国では皆さんのコメント、高評価、そしてチャンネル登録をお待ちしております。本日のアニメで知る中国は第19.5回「NHK出演の葛仰騫氏と京アニについて語ってみた」をナビゲーターのミミムで、お送りいたしました。

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次回もご期待ください。

北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは

2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。

TOP画像引用元:涼宮ハルヒの憂鬱公式サイト
http://www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/

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